「ニーネ・ベスト」発売記念・チェリータイムス・TONGちゃんによる
『ニーネ・ベスト』歌詞解説!

 ニーネの魅力はホントに沢山あって、それはカッコイイ楽器の音、独特のグルーヴ感、つかみ所がないのに暖かくて優しい人柄、サダさんのカウントや大塚さんの「オオイエー!」が意味も文句もなしにカッコイイ、などなど。  でも、今回の"漫画家・大橋裕之さんセレクトのベストアルバム"は、その噛めば噛むほど味が出る歌詞を重視して選ばれたということで、そのフレーズについて抜粋しつつ私なりのアレを書かせてもらおうと思います。ご指名いただき誠に光栄です。ありがとうございます。 TEXT:TONG(チェリータイムス)



どこまでもいけずな悶絶ラブソングだとボクは解釈しています


このアルバムの1曲目「酔っぱらっている」は、"ボクの作った歌なんかよりもボクの方がいいよ"という歌い出しではじまる。いきなりカウンターパンチでハッとさせられ、どういう意味なんだろう?と、ずーーーーーーっと考えていられる。考えてみるけど結局答えはみつからないし説明できない。なのに、なんだか暖かい気持ちになってとても不思議なのだ。"濡れたままの目ん玉でずっと見ていたい"と言ったあと、即座に"見ていてね"と言って終わるこの曲は、ニーネの不思議な魅力を凝縮したような1曲ではないか?と私は思う。

そして、2曲目。いきなり12回"タイ料理"と連呼する、その名も「タイ料理」。コーラスも含めるて何回"タイ料理"が出てくるだろう?と思って数えてみたところ、全部で84回"タイ料理"と歌っていた。この曲の中で"時間がない"と3回言ったあと、"君は昼間仕事してる ボクは夜仕事してる"と続くこの感じは切実で生活丸出しでスゴくグッときて、ちょっと笑ってしまう。"タイ料理"が大事なんじゃなくて、"君"が大事なんだなと思って聴くと"また同じものを食べて 同じに匂いになろう"で、うわあああああ!って思う。

「四倍ブルー」まずタイトルがすでに気になるフレーズである。そして、しょっぱなから"居心地よくても ただそれだけじゃ嫌だよ"と、超絶いけずなのである。そして"何かしてあげたいけど 何もしないよ"と更にいけずは続く。締めくくりは"頼りなくても いつまでもこうしていようよ"と、どこまでもいけずな悶絶ラブソングだとボクは解釈しています。"君を思い出すだけで 倒れそうな気分だよ"……言われたい!むしろ、言わせたいよ!

「うつぎみDXOK」はじまりは"続けるためにがんばろうぜ"のフレーズ。いきなりブワッと想像が広がる。とりあえず、何を???と思う。そして、ドンドン出てくる生活の中で気持ちを切り替えられそうな出来事たち。ここはお好みでぞれぞれお気に入りがあると思うんですが、私は"出来るだけバイトにも行って"ってフレーズが好き。奮起している。そして、"だんだん本気になってくよ 本当に本気になってくよ"といい調子なのだが、後半またちょっと具合が悪そう。なにせ「うつぎみDXOK」なのだから。それでも、"続けるためにがんばろうぜ"なのだ!私もがんばりたい!

「endless_summer」の歌い出しもかなり秀逸。"迷惑メールが一日60本 送ったメールはエラーメールが戻る"と、ちょっぴり社会派っぽいけど尋常じゃない生活感! そして、妙なみじめさが絶妙にかもし出されている。領収書のくだりとか、家の電話のくだりとか、ホントに上げたらキリがない! 可愛くてお茶目な秀逸フレーズの嵐! そして"返事がなくても 君に言葉飛ばし続けたい"という男前さを垣間見せたかと思えば、"掴まりたくても 掴まるところのない endless_summer"というパンチライン(感涙!)。

「しあわせのひびき」いつもの風景の中にある"うれしい"を次々みつけていくように進むこの歌の中で、私が特に大好きなのは"一人では思いつかない言葉 言えたら 言えたら うれしい"です。私の人生はコレのくり返しのように感じます。そして、"しあわせになるとしても しあわせになれないとしても 一緒に 一緒に" "また明日 会えるとしても 会えないとしても 一緒に 一緒に"というフレーズに静かな覚悟を感じます。

「summer melody」これは趣旨とはズレますが、どうしても言っておきたい。フレーズどうこうではなく歌い出しの歌メロが最高にクールです。超絶カッコイイ"サマーメロディー"。そして、"愛着なんかじゃないよ" "便利なだけで優しくするはずなんてないだろ?"と、言われたら複雑にならざるおえないこのフレーズ。私はどういう気持ちになればいいのか!? もの凄く印象的。そして、困惑! "屋上みたいな目だよ"……いったいどういうことなのか??? でも"素敵な君さ"と言われれば、"その気になって来いよ"と言われれば、なんだかとっても元気が出る、すごく不思議な曲です。

「終わりの歌」"今日のことは今日のうちに始末をつけたい"というフレーズを聞いて、生き急いでるのかな?とか、せっぱつまってるのかな?と想像したし、そういう状況で発想されるワガママかな?とも思った。"ギリギリだっていうことをもっと知りたい" "せっぱつまってるんだぜ っていうことをもっと分かりたい"というフレーズを聴いて私は終わりも始まりも、何事もギリギリにならないと人はなかなかに動き出さないものだもんなと思った。かと言って無理矢理ストイックになりすぎても面白くないもんな、とかとか。"普通にやんのも全然楽じゃないぜ"ということだと思う。

「夏休みは終わりだ」"葉生姜とたこ焼きを買いに行った"とか、"市川由衣が表紙の雑誌を買いにコンビニに行って値段を見てやめた"とか、このあたりのノホホン感と、その後の"人が死んで行くのはとても悲しい だけど それは自分か 誰かが先かって言うだけのこと"とか、"自分の気の済むやり方でやって行けよ"とか、"今日からはもう全部一人でやって行けよ"というフレーズのギャップがもの凄い疾走感の中で描かれている。ネモト・ド・ショボーレ氏の「ニーネの音楽には、生活していたら感じる「どうってことないホント」しかない。(コメントから抜粋)」とはまさにこのことか!と思わされる。


と、ここまで本当に好き勝手にいろいろ書かせていただきましたが、ニーネの歌詞の底知れなさは書いている大塚さん本人でさえ全部の意図を把握していないというところがスゴい。

私は大橋さんとニーネの歌詞について、あーでもないこーでもないと話している時すごく楽しかったし、幸運にもそれを大塚さんに直接聞いてもらえる状況だったわけですが、大塚さんはニコニコ聞いててくれて「スタジオで合わせながら曲を作るから、いきなり歌い出したらコレだったりして、オレもよく分からないんだよね〜」と相変わらず掴みどころがなくいけずであった。が、ゆえに私たちは自由だった。

なので、アルバムを聴いた友達と我々のように、あーでもないこーでもないと言ってみてほしいです。すごく楽しいし、発見がたくさんあるので。


なので、今回はじめてCD化され歌詞カードを手に入れることが出来た「海へ」「冬の空」「本当の先輩」については言及を避けたいと思います。


みなさま『ニーネ・ベスト』をいろんな方法で思う存分楽しんでください!
では〜〜!!!






2013/6/14「ニーネ・ベスト」レコ発記念ニーネ・ワンマンライブ!!高円寺JIROKICHI


近藤チマメ聞き役による「大塚久生(ニーネ)×大橋裕之 対談インタビュー」


ニーネ、ベストアルバム「ニーネ・ベスト」発売中!!特設ページ